Dangerous Charms

個人の感想です

中森明菜「Stock」

オリジナル発売日:1988年3月3日

12枚目のアルバム。シングルは収録されていないが、帯にアナザー・シングルスとあるように、シングル候補として制作されたものの選考落ちしてお蔵入りとなっていた楽曲の中から勢いのあるものをピックアップしたアルバムである。歌謡ロックという目的があったのか、FENCE OF DEFENSE北島健二をそれぞれの編曲者とは別にアディショナルアレンジャーとして招いており(おそらくギター担当かな?)、そこで統一感を出している。今までのアルバムから比べるとカタルシスを存分に感じられる久々に需要が高そうなアルバムではあるが、これまでの実験が祟ったのか34万枚の売り上げにとどまった。

88年の明菜さんはのっけから何かが違っていた。1月リリースのシングル「AL-MAUJ」の時点で、それまでの深くリバーブをかけてマスクしたり、声色を変えてみたりなどといったボーカルの実験や、囁きとおらびの両極端を行くボーカルスタイルから一転、ギミックに頼らずに声のコントロールのみで聞かせるスタイルへと変化、艶かしいく響く低音や囁き、そしてキメの明菜ビブラートといった自身のボーカルの操縦法を掴んだかのような作品だった。
その後すぐリリースされたこのアルバムでも同じスタイルが採用され、10曲全てでこの艶かしい低音と明菜ビブラートが聴けるという今までのアレやコレはいったい何だったのかというアルバムに仕上がっている。実際ファン人気もかなり高いアルバムで、これかビタスイのどちらかって人が多いのではないだろうか。
というより「不思議」「CRIMSON」「Cross My Palm」で色んなボーカルスタイルの模索を続けてきたからこそ掴んだカンとでもいうべきか。

1.FAREWELL
(作詞:許瑛子/作曲:佐藤健/編曲:中村哲
2.夢のふち
(作詞:飛鳥涼/作曲・編曲:後藤次利
3.CRYSTAL HEAVEN
(作詞:YUKO/作曲:都市見隆/編曲:松原正樹
4.まだ充分じゃない
(作詞:佐藤ありす/作曲:林哲司/編曲:松原正樹
5.FIRE STARTER
(作詞:SANDII/作曲:久保田真箏/編曲:村松邦男
6.NIGHTMARE 悪夢
(作詞:大島あきら/作曲:北島健二/編曲:FENCE OF DEFENSE
7.I WANNA CHANCE
(作詞:許瑛子/作曲:鈴木キサブロー/編曲:井上鑑
8.POISON LIPS
(作詞:湯川れい子/作曲:都市見隆/編曲:新川博
9.処女伝説
(作詞:FUMIKO/作曲:原田真二/編曲:小林信吾
10.FOGGY RELATION
(作詞:永井美由紀/作曲・編曲:佐藤準

補編曲(2.3.除く):北島健二