Dangerous Charms

個人の感想です

中森明菜「AKINA BOX 1982-1989」

2006年6月にデビュー25周年を記念してリリースされたボックスセット、通称「赤箱」。
ボックスと同時にDisc17までの作品はバラ売りされた。
信販売限定で、特典ディスクのミニアルバム「Seventeen」がなく箱と冊子の色が紫になっている「紫箱」も2007年に発売されている。
(ちなみにこの紫箱、内容も音源も赤箱のものだがパッケージに至るまでWQCQ品番の隠れたコレクターズアイテムである)

中森明菜のオリジナル・アルバムは1991年の廉価盤(ミニアルバム・ベストアルバム含む)と、96年のQ盤スリムケース仕様(CD選書のワーナー版である音泉シリーズ。ただしCRIMSONまで)が出たっきりでそれらは全て廃盤となっており、21世紀に入ってもワーナー時代の旧譜が新品で買えず、中古を探して80年代の音質で我慢するしかないという状況が長らく続いていたが、ここでようやくリマスタリング復刻されることとなった。
(いくつか出ているボックスセットでその都度リマスターされているというが未確認だし、そもそも入手困難の上に音源がどれも中途半端で揃わない)
といっても、こちらも限定生産なので結局買えなくなってしまったのだが。
売れ行きが好調だったのか、2010年にボックスのみアンコールプレスされ、その後2015年くらいまではAmazonに在庫が存在していた。私が購入したのは2014年。
(2020年追記:現在Amazonにて在庫が復活中!理由は不明)

ただ、82年5月デビューなので本当なら2007年に出すべきだと思うんだけど…仮にデビューを81年のスター誕生で合格した時期を基準にしたとしても8月。近年よくある○周年前倒し商法は10年前既に始まっていたということか。

実はこのボックスと同日に3年ぶりのオリジナルアルバム「Destination」がリリースされていて、25周年記念というよりそちらに照準を合わせてきたものと思われる。ワーナーから離れて久しい明菜さんに対するストーカーのようなリリースのやり方というのもアレだが、あと1年くらい待てんのかとその商法にため息が出る。2007年に25周年記念としてバラードベストが出ているので、そこに合わせりゃよかったのに。2006年1月に「BEST FINGER」を出したので、ベストはしばらくないと踏んだのだろうか?

さてそんなボックスを購入し一通り聴いてみたところ、個人的にはこのリマスター、支持している。
作品によっては高音きつめにされたような感じは確かにするので機器によっては耳に刺さる感じがするかも知れない。
旧盤が元々ドンシャリ気味の作品の場合、音圧が上がったことによりそれが強調されてきつめになっているものも、ある。

この手の回顧録的商品を購入する人は「あの頃の追体験」をやりたい現役ファンが多いと思うので、音が当時とは違ったものになっていれば「これは違う」と思ってしまうのも仕方ないと思う。
だから2012年にSACDで改めてリマスターされたにも関わらず、旧盤CDがネットオークション落札され続けるんだろう。
でも全くの現役世代ではない自分は、このリマスターで逆に「今出ている新作のポップスとも全く遜色ないじゃん」という感想を抱くことができた。

音質というのは禅問答みたいなもんで、これで正解、というものがないから何を出しても叩かれるし煩いオーディオファンは「アーティストの意向」なんてものはお構いなしに自分のオーディオに最適化されたものばかり求めるしで、ほんとキリのない世界である。
ただ個人的に不満を述べさせてもらうと、歌詞カードが…。シングル紙ジャケットに詰め込む必要があるのせいか、とにかく紙が薄すぎる。そのうち破ってしまいそうでこれはちょっと不満どころ。

あと、中森明菜のLPは「BEST AKINA メモワール」以外はすべてシングル紙ジャケットでリリースされたのでこれもそうなってるんだが、一カ所にディスクと歌詞カードと復刻リーフレットとものによっては特典を詰め込んだ結果、
ディスクにそれらが圧迫されて円形のしわが付いてしまってるのが多い…。
これはシングル紙ジャケットの宿命なのと、不織布にはある問題があり今は使用してないという事情とが重なった不運とも言える。
これを解決するにはコーネリアスの「POINT」みたいなごく薄いマチを作った紙ジャケット(いわゆるE型)に切り替えて余裕を持たせるかダブル紙ジャケットに変えるしかないと思うんだが、それじゃ再現の意味がない。悩ましい問題だと思う。

AKINA BOX

AKINA BOX