Dangerous Charms

個人の感想です

中森明菜「ファンタジー〈幻想曲〉」

オリジナル盤発売日:1983年3月23日

中森明菜のサードアルバム。サードシングルの「セカンド・ラブ」(←ややこしい)を収録したこれまた大ヒットアルバムで、61万枚を売り上げている。
ただ、はっきり言ってこのアルバムの内容はよろしくない。61万売っていいレベルじゃねーぞ
内容は前作と変わらないのだが、なんだかファーストやセカンドから漏れた余りの曲を更に寄せ集めたような印象を抱いてしまう。
まずファーストの「あなたのポートレート」やセカンドの「キャンセル!」みたいな、シングルとして売っても成功しただろうなと思えるキャッチの強い曲がないし、ファンタジーというタイトルの割にファンタジーなイメージの曲もあまりない。
というかこのアルバムだけではなく、83年のリリース作品がどれも「どうよ?」なものの連続で、当時のスタッフのセンスが疑わしいものだが…83年末にリリースされた「BEST AKINA メモワール」というベストアルバムのプロデューサーによるコメントを見る限りではそんな自覚があったように思えなかった。
それでも明菜パワーで以てどの作品もヒットしてしまったもんだから、分からなかったのも無理はないけれど。

このアルバム、冒頭の「明菜から……。」がいきなり奮ってる。萩田氏のストリングスをバックに明菜さんが「今楽しいですか」「今悲しいですか」とひたすら語りかけるだけのもの。
昔のアイドルにはよくあるおしゃべりとかメッセージみたいなトラックを明菜向けにしてみたら、この哲学か禅問答のような語りかけになったのだろうか…?

「瑠璃色の夜へ」
(作詞:来生えつこ/作曲:佐瀬寿一
禁区よりも早くテクノの打ち込み音が登場してるので誰だと思ったら萩田氏によるもの。なんだ、わざわざ禁区で細野氏の不穏な打ち込み使わなくても良かったんじゃ。夢の中に溶けていきたいというファンタジックな良曲。

「アバンチュール」
(作詞:岡崎舞子/作曲:森一海)
サンバを使ったリゾートソング。でもこれ「Bon Voyage」の焼き直しっぽく聞こえる。同じサンバでもミ・アモーレとは雲泥の差。サビのボーカルの張りだけ楽しみましょう。

「にぎわいの季節へ」
(作詞:大津あきら/作曲:木森敏之)
コテコテの歌謡バラードというか演歌の領域だろ。若手演歌歌手がカバーしてくれないかな。もったいないから。

「傷だらけのラブ」
(作詞:伊達歩/作曲:芳野藤丸
やけにテンション低めのツッパリソング。歌詞にドラマもなくて、なんか残念。

「目をとじて小旅行」
(作詞:篠塚満由美/作曲:茂村泰彦)
明菜さんには珍しいアコースティックなアップテンポ曲。これも夢をみることを旅行に例えたファンタジックな良曲。

「セカンド・ラブ」
(作詞:来生えつこ/作曲:来生たかお
言うまでもない大名曲。でもこれ浮いてませんか。

「思春期」
(作詞:売野雅勇/作曲:芹澤廣明
少女Aコンビによる「してもいいのよ〜」とぶちかます完全なるセクハラ歌謡。これは内容がそのまますぎて百恵ちゃんのセクハラ歌謡の型落ち版みたいでよろしくない。

「Moreもっと恋して」
(作詞:伊達歩/作曲:米倉良広)
「かわるの かわるわ」というフレーズが印象的だけどそれだけといった感じのアップテンポ歌謡曲

「アイツはジョーク」
(作詞:中里綴/作曲:福島邦子)
〆のツッパリソング。「条件反射」でも分かるけど中里さんはツンデレ娘を表現するのが上手い。

(編曲:萩田光雄

そもそもファンタジーというタイトル付けたのに、何故それを感じるさせる曲がほとんどないのか、中途半端にツッパリソング入れてるのか、などツッコミたいところは色々あるけど、何よりアルバム曲に来生たかおさんの曲を入れてないのが謎。
そう、このアルバムにはシングル以外のバラードがない。演歌はあるけど。
こういうのはベタベタだがセカンド・ラブに乗っかったバラード集にでもしとくのが安全パイだしそれ聴いてみたかったのに、何故やらなかったのか。
気負いがあさっての方向へ飛んだのか、それとも曲のストックがなかったのか、ディレクションミスか、とにかくスタッフの判断がダメすぎて困る。
更に困るのが83年は次作「NEW AKINA エトランゼ」で更におかしな方向に飛んでしまうことなのだった…。

それにしてもアルバム三作連続で、帯にパンチラした女の子のイラストを載せてるのはどうかと思うぞ。
あと、手書き歌詞カードの各曲の結びに「明菜から…」と添えているのだが(本人作詞でもないのに何故?)、これがCD版の歌詞カードでもそのまま活字で印刷されているのが変でたまらない。紙ジャケ盤ですらそうなっている。そのせいで歌詞サイトでも明菜から…って末尾にあるので…あーあ。

ファンタジー<幻想曲>AKINA NAKAMORI THIRD

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